

あまり知られていない言葉の語源
おいてけぼり、という言葉がありますな。
おはらいばこ、という言葉もある。それぞれの言葉が表す意味、知らない人はあまりいないと思うんだけど、なんでこう言うんだろう。つまり語源だ。
当初、別に私は疑問に思ってはいなかった。
たとえば「おいてけぼり」。
置いていかれてしまって、放ったらかされたから「置いてけ、放り」で、置いてけぼり、とね。
違うのだ。これ実は「置いてけ堀」という、本所(現在の東京墨田区)の堀の名前でありまして、江戸時代、ここに河童が住んでいて、人々が釣った魚を「置いてけ、置いてけ」と強いた、という奇譚から、この言葉は生まれたのだという。
お払い箱も同じで、私は長いこと「追い払われたかわいそうな私が、いじけて閉じこもってしまう箱」というようなイメージを勝手に持っていた。
もちろん違う。正解は伊勢神宮なんだそうだ。
本来「お祓い箱」と書いて、お祓いの札を入れておく箱を意味した。
伊勢神宮は毎年、年末になると、御師(おし・祈祷を専門にする神職のこと)が御祓いをしたお札や暦を、箱に入れて諸国の信者に配っていた。で、この箱こそがお祓い箱。
そのお祓い箱、毎年新しいものを配っていたため、古いものは神社の方に返すというしきたりになっていたという。ここから、不要になった物をお返しする、転じて、捨てることを、お祓い箱、字が変わって「お払い箱」というようになったんだそうな。
ふーむ、そうか。
自転車用語にもあるよ
いつの間にやら、本来の意味が失われて今にいたる、と、そういう言葉、じつは自転車関係には多い。
ヘンな言葉が多いんだね。自転車用語は。
たとえば「クイック」。
この言葉、自転車業界内では、ハブの中心、ホイールをはずすための取っ手のことを指すことが多いんだけど、なぜクイック? 速いの? ってね。
もちろん語源は「クイック・リリース」でありまして、ボルトをレンチで回すよりもはるかにクイックにホイールをはずせる。こりゃ便利、レース中はもちろん、ツーリング中にパンクしたときだって、指先でクリッとひねるだけ。
クリッとひねるからク“リ”ックというわけじゃないよ。ク“イ”ック。こういうこと、あえて言うのは、先日、私の知り合い(20代前半)が、この部品のことを「クリック」「クリック」としきりに呼んでいたからだ。パソコンじゃあるまいし……。しかし、元々の「クイック」も、リリースを略してしまうと、何だかワケの分からない言葉ではある。意味がワカラン、という意味では、クリックもクイックも大してカワラン。
で、その知り合い(20代前半。ついでにいうと私の元部下)少々、ボーッとしたところがあって、別の機会に「生ライブだ、生ライブだ」などと、これまたしきりに言っていた。コンサートの話であります。
聞いていて、私などもうとほほのほだ。
あのね、ライブってのは、もともと「ライブコンサート」の略であって「生で聴くコンサート」のことなのよ。ライブとはそのまま「生」のこと。だから、テレビの生中継などだと、右上に「LIVE」って字幕スーパーが出るでしょうが。
生ライブだと、生生(なまなま)ということになってしまう。もう本当に、どこまで生なんだ……、とね。そこまで言って「あ、そうか」となる。
ただね、昨今でいうと、テレビ(弊社だ……)の歌番組なんかで「AKB生ライブSP」なんてサイドスーパーが、平ッ気で出るようになっちゃって、もうこんなこと言ってること自体が馬鹿馬鹿しくなってくるのだ。
ローディってどこからきたのか?
話がずれた。
自転車用語には「ローディ」というスゴい言葉もあって、もちろんご承知の通り「ロードバイク乗り」のことをいう。略しに略されてROADIE。
ただし、これ、ほんとかうそか、語源は音楽業界にあるそうだ。コンサートツアーなどで、機材を載っけてトラックで走り回ったりする、移動、運搬、セッティングほか、サポート業務全般をする人を「ローディ」と呼ぶそうだ。
そこからローディ? ふむ、このあたりの関係性は、正直言ってよく分からない。
よく分からないといえば、前提となる「ロードバイク」という言葉自体も、じつは若干の謎言葉なのだ。
元来で言うと、自転車には「オンロードバイク」と「オフロードバイク」の2つがありまして、前者が舗装路、つまりアスファルトの上を走るもの、で、後者が舗装路以外、つまり野山などを駆け回るバイク、という話だ。
このうち、ロードバイクは前者の「オン」が落ちたものということになる。つまり、ロードバイクというカテゴリーは、本来でいうなら、ママチャリも、クロスバイクも、ミニベロも、すべて含む、すごく広い概念となるわけだ。
ところが、ロードバイクと言えば、ドロップハンドルのあればかりを指すようになった。以前は「ロードレーサー」と言っていたものだけどね。それだと何だか人を指しているようなんで、今では「レーサー」よりも「バイク」をあてる方が定着した。
ふーむ、でも考えてみるとやっぱりヘン。
この「バイク」関連で言うと、人口に膾炙し、なおかつヘンな言葉なのは「原付バイク」というヤツだ。
原動機が付いたバイク。
「日本語」としては、バイクと言うと、イコール最初から原動機が付いているわけで、原付バイクってのは、あれま? ということになる。
ご承知の通り、正確には「原動機付き自転車」であります。
もともとエンジンが付いていないはずの自転車に、極小の原動機を付けてみました、と。50CC程度なら、そこまで危なくなかろうということで、別枠になったのが、この「原付」なのだ。
だから、この原付自転車を原付バイクと言っちゃうと、これまた二重言葉で、生ライブと似た話になっちゃう(笑)
自転車用語はよく分からない
ただし、だ。
ただし、この「バイク」という言葉に注目するなら、話は再逆転するのだ。
元来、バイクとは、二輪車全般のことを指すわけであって、カタカナ英語として多くの日本人が考える「バイク=モーターサイクル」というのは原義に悖っている。
元々の英語では、バイク=二輪車は慣例的に、そのまま自転車を指すことが多い。だからこそ、マウンテンバイク(もちろん自転車)や、シェアバイク(もちろん自転車)などという言い方には、そのままバイクが付く。自転車の英訳としては、バイシクルより、バイクの方がむしろ一般的なくらいだ。
ということになると、原付バイクは、あれ? 原動機付きの自転車、ということになる。ということは、回り回って「原付バイク」は正しいってわけ。
いやー、日本語は生きている。
って、なんだかよく分からない(笑)。








