








希有な体験「ふじのくにCYCLE FES 2011」
参加しましたか? 新東名。
あ、しなかった。そうすか、抽選で外れましたか。それは残念。
参加した人は分かると思うけど、この「ふじのくにCYCLE FES 2011」ってやつ、色々な意味でスペシャルな体験だったなぁ。
完成直前の新東名高速道路を走る、というイベント。高速道路が自転車だけに解放される、もうこれだけでトンデモなくスペシャルな話なんだけど、実際にもそうだった。
まあ、予想はしていたものの、スピードが出ること出ること。
基本的に平坦で、まっすぐで、なおかつアスファルトの質がいい。だから、ちょっと漕いだだけで、40km/hが普通に出て、また、10分程度なら、その40km/hを維持できる。3時間走っても、平均スピードが30km/hに近い。
走った人には分かると思うけど、誰にとっても生涯最高スピード(平均)が出たと思う。
これね、ただ単に最高スピードを出すだけならば、下り坂で出るのだ。
峠越えの帰り道、長々と続くダウンヒルで、あれよあれよと50km/h……、なーんてことは、あるでしょ。しかし、そのスピードは一言でいうと、恐い。邪悪なスピードなのだ。
下り坂のあの状況だと、常に勾配が背中を押すという形になり、いったんスピードを出してしまうと、おいそれとは停まれない。パニックブレーキなんざ握った日にゃ、あっという間にガードレールを突き抜けて、谷底落下だ。これ、ホントの話。
ところが、新東名のこの状況は、まったく違うのだ。
平地で、まっすぐで、広くて、路面に「荒れ」がない。見通しがきくから危険をすぐに察知できる。で、何かあったら安全に停車できる。
こうなると、何の不安もなくスピードが出せて、なおかつ、あのダウンヒルの不安感、冷や汗感が皆無となる。
あるのは安心感、余裕感のみ。で、アタマの中のギアをどんどん上げていくことができる。
なんだろう、この快感。こんな体験、こんないい道が、これから先、クルマのためだけにあり続けるなんて、ズルいではないか。
◆
トンネルの中というさらにスペシャル体験
さて、そういう「自転車で高速道路を通る」という体験を、さらにスペシャルにしてくれたのが、トンネルだった。
なかでも4,545メートルにもなる富士川トンネル(新富士IC-新清水ICの間)は、トンデモないスペシャル感だったぞ。
長い、もさることながら、広い。
そのスケールは、大げさに言うなら、田舎の小学校の体育館をいくつもいくつも縦につなげたという感じなのだ。天井も高いし、横にも広い。その中を自転車で走り抜ける。
トンネルの中だから、風もないし、上下の勾配も極小だ。
見るもの何もかもが、自然感ほぼ0%。で、人工感なら100%。私はここを「自転車という“機械”の一部」となって、ひたすらペダルを踏んだ。
トンネルの中のおよそ4.5km。当然ながら風景はずっと変わらない。音もなし。聞こえるのは自分が風を切る音だけだ。
走っているウチに、前からはちぎられ、後ろはちぎり、で、なぜか「トンネルの中は自分一人」という時間が訪れた。しかもその時間が非常に長く続く。
これ、ヘンなもんでね。
入り口も出口も見えない巨大トンネルの中を、ひとり孤独にペダルを踏むわけだ。見渡すかぎりのコンクリート。生きているものが何もいない。
スピード感も、現実感も、いつしかなくなってしまい、なにかコンピューターの中であるかのようなバーチャルな空間を一人勝手に進んでいるような感覚に陥った。
◆
あり得ないトワイライトゾーン
途中、そのバーチャル感覚をさらにエスカレートさせてくれたのが、両側の壁に光る「←出口→」の白と緑の電光掲示板だ。
ある地点では「←400m 出口 300m→」と書いてある。しばらく行くと「←150m 出口 550m→」となる。ところが、またさらに行くと「←500m 出口 200m→」となり、さらに「←300m 出口 400m→」となる。
アタマがくらくらしてくる。
これはいったい何なんだ?
おれは本当に前に進んでいるのだろうか。このままトンネルは永遠に続くんだろうか、と思えてくる。同じところをグルグル回っているだけなのか? 一直線のトンネルで、いったいなぜ?
現代のキツネの化け物が、おれをこうして騙しているのか? もしも出口に辿り着いたら、その出口の先は、恐らく別の世界……、なんてね。
でも、これはいったいどうした現象なのだろう。本気でありえないトワイライトゾーンではないか。
と、よくよく見てみたら、ようやく謎が解けた。
「出口」と思っていたのは、実は「非常口」であって、この表示は(徒歩で)走って逃げることのできる、外への出口までの距離を表してたってわけ。
なんだそうか。どうりで足しても4.5kmにならないわけだよ。
ま、ペダルを踏んでいくと、どんなに長いトンネルでもやがて終わりはやってくる。出口を出ると、そこは無事に、元の世界だった(当たり前だ)。
◆
これなら、このまま名古屋、行けるじゃん
それにしても、あらためて気づいたんだが、この高規格舗装ってヤツは、走りやすいなぁ。
クルマにとっても走りやすいんだろうけど、自転車にとってもそれは同じだ。
これならば、東京-名古屋も一日で行けるかも、という気にさせられたね。
だって、東京から名古屋まで、だいたい300kmというところでっせ。大まかにいって、平均30km/hで10時間走れば着いてしまうのだ。「ブルベだ」「オーバーナイトだ」とか気負わなくても、これなら1日で行ける。
こうなると、この高速道路、この日で終わり、自転車では二度と走れない、というのが、残念でしょうがない。なんとか「高速に自転車レーン」なんてことが、安全に実現できないだろうかと思う。
今回のふじのくにイベント内で開かれた私のトークショーでは「ネクスコ中日本(旧道路公団のことだ)の人に、これはもう新東名は自転車用ということに変更しましょう、と言ったら、怒られた」とか「では新東名はあきらめるから、現行の東名を下さいと言ったら、コレも断られた」とか、ま、冗談で言ったりはしていたんだけど、そうだなぁ、それもこれもたったの2日で終わり。今後、この道は、クルマのためだけに使われ続けるのだ。
繰り返しになるが、ズルいぞ(笑)。
通行料はきっちり払うから、何らかの形で自転車にも解放しなさい。
いや、満更ジョークというわけではなく。







