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自転車ツーキニストでいこう!疋田智の連載えっせい

疋田智

第42回 しまなみ海道 〜 小さいようで実は大きい10年の進歩




しまなみ海道 〜 小さいようで実は大きい10年の進歩


 うーむ、またまた走ってきた。瀬戸内海を横断する天空の回廊・しまなみ海道である。本州と四国を結ぶ、いわゆる本四架橋の一番西側のひとつだ。昨今は、全国どころか、世界中のサイクリストから「一度は走ってみたいコース」と注目されていると聞く。
 しまなみ海道がスペシャルなのは、そうした橋、そして高速道路横に、必ず“サイクリングロード”が、並行していることだ。そこを初心者でも安全かつ快適に走れる。
 自転車の通行料金は橋によって違うけど、50円(伯方大橋など)から200円(来島三連橋)で、6橋すべて渡っても、合計500円にしかならない。
 どこから乗っても無理のないスロープが造ってあり、いわゆるママチャリにだって楽に走れる。
 ふーむ、相変わらずよくできてるなぁ。
 実を言うと、私ヒキタ自身、このしまなみ海道を、端から端まで走るのは、ほぼ10年ぶりである。
 10年前、ここに来たときも「うわお、これはスゴい、宮内さん(「サイクルスポーツ」前編集長)が絶賛するわけだ」と思った。で、今回だ。あの頃と、橋の様子、佇まいなど、基本的な有り様はまったく変わってはいない(一番変わったのは、30代だった自分自身が40代になっていること)。
 ところが、よくよく見ると、少しずつ進歩しているところがあるのだ。2002年と2012年の差は、そのまま「自転車ブームが来る前、来た後」の差でもあるが、行政が少しずつ自転車について考え始めた差でもある。



10年前と較べて変化したこと(1)外国人


 一つ目は「外国人が増えたこと」だろう。
 このしまなみ海道、瀬戸内海という海(川じゃない)を眼下に見下ろす、世界的にも非常にスペシャルな橋だからだ。
 ここを訪れたことのあるアメリカ人によると、“SHIMANAMI”というのは、“ツール・ド・フランス”のヒマワリ畑とか、アムステルダム郊外の自転車専用道路とか、サンフランシスコのロンバード・ストリート(世界一くねくね曲がった坂道)とかと並んで、世界的にも自転車レコメンド・コースとして、有名なのだそうだ。
「リアリー?」
「オブコース、イエース♪」(ホントにホントか? 若干調子よすぎるような……)。
 本当にそこまで有名なのかどうかは、ちょっと私にはわからなかったのだが、確かに今回、外国人とはたくさんすれ違ったな。
 10人程度の男女グループで、今治から尾道に向かうアメリカ人たち(星条旗をリュックに縫い付けているのですぐに分かる)。
 新婚旅行(?)のように見える、これまたアメリカ人らしきカップル(彼らの場合「アメリカ人」の根拠は英語のみ)。太ったドイツ人の男3人組(おそらく、ドイツ人版の輪太郎、陣太郎、なまはげだ)。
 そして、タンデム・リカンベント(珍しい!)に乗った、二人の大小女性だ。どこの国の人なのか判然としないけど、とにかく目をひくことは間違いない。大きな女性と、小さな女性。何だろう、ペアで一人前、しかもこの自転車に乗って初めて完結するという感じ。合体ロボみたいだ。
 それ以外にも台湾人とおぼしき人々もいるわけで、ま、とにかく、しまなみ海道は、思った以上に外国人たちに注目されていると見て間違いない。
 この5月にはGIANTの劉社長も、台湾人50人を引き連れて、ここでサイクリングするという。
 じつは今治市(四国側)も海外の観光客誘致に熱心で、私もシンガポールで「島波海道」と書かれた繁体字のポスターを見たことがあった。
 ふーむ、いいぞ、しまなみ。“YOKOSO JAPAN!”だ。



10年前と較べて変化したこと(2)自歩道の見直し


 この10年間の変化。私ヒキタとして、一番感動的だったのは「自歩道(自転車歩行者道)」の見直しだった。
 もとより、しまなみ海道の自歩道、ほとんど歩行者が通らないために、実質的な自転車道であって(自転車ももちろん通行料を払う)、そのままでも快適、安全には違いはなかった。
 しかし、そこは原理原則を貫く、という姿勢も必要だろう、と、私にはちょっと忸怩たる思いもあったのだ。
 ところが、今回、因島で見たのは、歩行者と車両を分ける、という姿勢だった。
 写真を見ていただければ分かるが、区分けは「歩行者」と「自転車および125cc未満の自動二輪と原付」だ。
 歩道は全体の3分の1程度。そして、残りの3分の2を、自転車と小さなオートバイがシェアし合う。
 これはいい。たいへんに走りやすく、いくらでもスピードが出る。しかも安全。
 これでいくなら、もうしまなみは完璧である。さきの外国人たちにも、何の疑いもなく「しまなみ・グレートだろ?」と、誇ることができる。
 願わくば、これがしまなみ海道全線で採用されんことを。今治市側、尾道市側、双方にお願い申し上げる次第だ。



10年前と較べて変化したこと(3)ブルーライン


 そして、地味ながら、なかなかよかったのが、車道にひかれた「ブルーライン」というヤツだ。
 これは橋梁部分じゃない。
 合計7つの橋は、いずれも驚異的な「天空の回廊」であり、しまなみ海道・観光の目玉なんだけど、島の中を走る一般道という部分もある。
 この島内部分がけっこう味わい深いのだ。道草の醍醐味あり、美味しい瀬戸内の魚あり、意外な島の歴史ありで、通に言わせると「橋より面白い部分」なんだけど、ここに「しまなみ海道、ここでっせ」という案内ガイドのラインが引かれた、というのだ。
 それが、ブルーライン。
 このブルーラインに従っていけば、しまなみ海道をまっすぐ行けるという道案内になる。これが安心感に繋がっている。
 そして、このブルーラインが圧倒的にナイスなのは、きっぱりと車道側に、左側通行の矢印をあしらいながらひかれているところだ。
 例外はひとつもなく、すべてが車道で左側。つまり、ラインが無言で「自転車は車道だよ」「自転車は左側通行だよ」というのを示しているのである。
 こうしたものの教育効果は、大きいと考える。
 事実、このしまなみ海道を通っていると、車道逆走自転車がほぼ皆無なのだ。サイクリストはもとより、地域住民も、右側通行をしない。
 これ、観光地とか、そうでないところとか、関係なく、けっこう全国的にも珍しい話でね。
 自転車レーンをひくほどに道幅はない、しかし、クルマとシェアして車道左端を行くべきだ、と、そういう場合に、このブルーラインは大きな選択肢となると思う。全国の自治体は、ちょっと考えてみてもいいんじゃないかしら。

 ま、いずれにせよ、走るべし、しまなみ海道。
 まだ走ったことのない人も、走ったことがある人にも、大オススメで、少しずつ進化しているこの驚異のサイクリングコースを、この夏、実感してみるのはいかがか。
 しかしまあ、日焼けの度合いもすごいけどね。
 直射日光を遮るものがなく、海からの照り返しも強いから、当たり前とは言え、日焼け対策についてはおさおさ怠りなく。











大会・イベント情報
5月5日(土)〜27日(日)
ジロ・デ・イタリア
6月30日(土)〜7月22日(日)
ツール・ド・フランス
8月17日(金)〜19日(日)
お台場サイクルフェスティバル2012


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