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自転車ツーキニストでいこう!疋田智の連載えっせい

疋田智

これ以上ない最悪さ、国道14号線「亀戸自転車道」の愚






 東京、江東区亀戸。国道14号線が明治通りと交わる交差点付近に「自転車道」とやらが設置されている。
 これがひどいシロモノでね。
 マジメな話「道路の設計自体が道路交通法違反です」として提訴したら勝てるのではないかと思う。と、それくらい滅茶苦茶な作りなのだ。
 首都圏にお住まいの方は、ぜひ一度、夕刻に訪れてみていただきたい。このスゴさ、危険度は、実際に見てみないと実感として分からない。が、実際目にしてみたら実感として分かる。震え上がるはずである。これを設計し、施工して、これで安全、これでOK、としている人々は、いささか知能が足りないのであろう。もしくは、激烈 なる二日酔いのまま、この自転車道とやらを作ったかだ。
 まずは、とんでもなく狭いゾーンを半分に区切り、双方向通行にするという愚劣。これで正面衝突事故が起きないと考える方が、どうかしている。
 夕刻の部活帰りの中高生、塾通いの小中生が、このゾーンの中を併走して走り、あちらでごっつんこ、こちらでごっつんこ、だ。実際に、私が見ている目の前で、5分に1度、いや、3分に1度、「事故寸前!」が起きていた。
 この「事故寸前」のタマランところは、両側がガードレールで固められているため、回避不能、いわば雪隠詰めのような形で、必然的な事故となってしまうところだ。だからというべきか、それを避けたいママチャリ族は、相変わらず歩道を走っているし、あろうことか、目の前で警察官乗車の白チャリすら歩道を走っていた。
 笑い話のようだが、真正の事実である。しかしね、私はむしろこの警察官に同情するよ。誰が見てもこのゾーンは危ないし、そもそも自転車の利便性などまったく考慮の埒外なのだ。  事実を言うなら、自転車に乗っている人の半数以上がこの自転車道を走らず、歩道を走っている。だいいち警察官すら走れない「自転車道」とやらを、誰が走れるものか。  そんなシロモノについて、ふと歩道橋を見上げると、こんなキャッチコピーが掲げてある。
「安全の新常識」。
 ちょっと笑った。
 ジョークのつもりなのか何のつもりなのか、よく分からないんだが、どう見たって「安全の珍常識」もしくは「安全の非常識」の誤植だろう。
 現実に目の前にあるのは「自転車を危険にさらすために、わざわざこれを作りました」とでもいうような、ありがたーい施設である。ありがたすぎて涙が出る。
 よく交通事故に関して「ヒヤリハット」なんてことが言われるが、亀戸の自転車道、いかにすれば、ヒヤリハットが多発するのか、念入りに調べ、工夫を凝らして、わざわざ設計されているといえよう。自転車事故の文法を忠実に再現した、実に見事なものである。
 おそらく「自転車事故マニア」のような人が、国交省か、都か、区か、警察にいるんだろう。で、庁舎の奥の間にいて、うひひひ、国道14号線を通る自転車が、事故を起こしますように、起こしますように、と、祈っているのである。どこかのビル内に、そういう「黒ミサの間」みたいなものがあるのかもしれないし、ショッカーの基地、バルタン星人のアジトのようなものがあるのかもしれない。
 こんなこと、冗談のつもりで言っていたんだけど、今となっては半分本気だ。この21世紀の日本のどこかにそういう人がいるのである。でなければ、この「自転車道」の設計、本気の本気で理解できん。
 私は呆れてしまうんだが、「事故を願っている」とまでは言わなくとも、こうした「自転車道」、基本にあるのは常に次の意識だ。
「自転車のような路上の邪魔者は、隔離しちゃいましょうね」
 このゾーンの狭さを見るだけで、そんなことは一目瞭然である。だが、その意識がいかに時代遅れで、市民の幸福に逆行しているか。欧米諸国を見ずとも、多くの人々はすでにご存じの通りだ。
 ただね、このゾーン、それだけじゃすまない邪悪さを持っているのだよ。
 何かというと、このゾーンの「自転車道」指定という危うさだ。なんのことだろうか。法律の条文をひもといてみよう。

自転車道が設けられている道路では、やむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。(道路交通法第63条の3)

 ここにある通り、一度、自転車道と指定されたが最後、自転車はここしか走れなくなってしまう。つまり、ここ以外を通る自転車はすべて道交法違反ですぞ、というわけ。ちなみに罰則は2万円以下の罰金(反則金ではない)である。
 聞けば、この「自転車道」は地元の公安委員会の指定で、何とでもなるのだそうだ。どんなに危険で下らないゾーンだって、一度指定されてしまうと、自転車はそこしか走れない。
 もちろん亀戸のこのロクでもない事故誘発レーンも例外ではない。自転車道指定されたが最後「自転車はここしか通ってはいけません」なのだ。で、現実として亀戸はそうなのである。

 結果、事故が頻発する。死亡事故だって起きるだろう。それに関して、責任をとる人間は、公安委員会の中にも警察の中にも国交省の中にもゼロ。自転車乗りが馬鹿を見るだけである。これはママチャリからピスト乗り、すべてを含めて言える話で、こんなにバカバカしいことが許されてもいいのだろうかと思う。
 もちろん許されないに決まってるんだが、その許し難さを象徴するかのように、この亀戸の例を、よーく見ると、あることが分かってくる。
 これを設計した人が、いかに道交法を理解していないか、だ。最後の写真を見ていただきたい。
 この自転車道、歩道(自歩道)からの誘導はなされているが、車道からの誘導はゼロ。誘導どころかガードレールで遮断されている。
 つまり、ここにいたるまで道交法17条と18条を守って、車道左を走行してきた自転車は、ここで、どこにも行けない、自転車道にも入れない、どうしようもない状態に陥ってしまうわけだ。
 これはこの自転車道を設計した人間が、道交法をそもそも知らず「自転車は歩道じゃん」と、思考停止状態で作っただけだ、ということを物語っている。
 そんな人が設計した、ふざけたシロモノが、自転車道指定され、そこで自転車乗りが事故の危機にさらされてしまうという噴飯。
 考えてもみていただきたい。
 ここまで法律をキチンと守って自転車で走ってきた善意の市民は、ことここにいたると、逆に走っても道交法違反、押して歩くこと(これも逆走の形になる)もできない、自転車道に乗ることもガードレールによって阻まれる、もしも抱えあげてガードレールを超えて中に入ったとしても、逆走する自転車との正面衝突が待っているという仕掛けになっているのだ。
 私が「設計自体が道路交通法違反だ」というのは、ここだ。この道路は必然的に犯罪者を生む「道交法違反者発生装置」なのである。
 設計者に赤切符を切るべきではないか。少なくとも「2万円以下の罰金」程度は科すべきだろう。

 もちろん、この最悪最低の亀戸自転車道も「自転車通行環境整備モデル地区」の1つである。おそらく今後も全国でこれに似た糞バカな思考停止自転車走行ゾーンがバカバカ作られていく。
 有名な名古屋の伏見通りもその例の一つだし(これは「自転車レーン」だから、今となってはまだマシな方。こんなものができても、自転車は車道を走れる)、同じく名古屋の桜通り(ここは自転車道指定される予定)は、さらにダメな最悪「自転車道」として、着々建設中だ。
 そもそも自転車走行スペースには、安全のための三原則がある。

@クルマと順行走行であること
A自転車レーンと車道の間にガードレールや植栽などの視界遮蔽物を置かないこと
B自転車レーンをまっすぐとすること(“自転車横断帯”への誘導をしない)

 これは欧米自転車先進諸国においてはすべて「当然の原則」だ。それぞれの理由は長くなるので拙書「自転車の安全鉄則」などを参照していただきたいが、すべて「交差点での出合い頭を防ぐ」「ドライバーの心の視界を妨げない」「巻き込み事故の危険を減らす」などの意味が、厳然としてあるのだ。
 欧米だけじゃない。日本にだって、宇都宮や尼崎など、これを守って作った成功例がある。なぜそういう優良事例を参考にせず、こうした事故誘発レーンを(市民の生命を的にして)作るのか。毎度のことながら、私にはさっぱり分からない。
 亀戸の例は、一言でいうなら「何のため」の理解がゼロである。結果、この自転車道、自転車のためにも、歩行者のためにも、クルマのためにもなり得ない。
 税金は使いまくる。「モデル」の意味も分からない。いったい何のため、誰のためなのだろうか。
 こうなると「何もしない方がマシ」なのは当たり前で、「何のため」の部分が欠落すると、行政はここまでおばかさんなことになる、という好例だ。
 ともあれ「マシ」どころじゃない。
 私は行政に「お願いだから、何もしないで下さい」と心より懇願する次第だ。
 お代官さま、工事費として税金をかすめ取りたいならタダで差し上げます、天下り先が欲しいならそれも差し上げます。
 お願いですから、何もしないで下さい。


大会・イベント情報
2月11日(土)
シクロクロス東京2012
3月4日(日)〜11日(日)
パリ〜ニース


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