90年代後半、高剛性化と引き換えに快適性を失ったフルアルミフレームは、選手達(や、もちろん一般のライダー達)の身体を痛めつけ始めていた。
「剛性と快適性を両立させることはできないものか」
ピナレロは、アルミフレームのシートステーにカーボン素材を挿入することで、そんな難題を優雅に解決してみせたのである。
名車といえば?という質問に対して、この初代プリンスを挙げるロードバイクファンは多い。97年のツール・ド・フランスでドイチェテレコムチームにプロトタイプを供給し、翌年のミラノショーで世界初のインテグラルヘッド/カーボンバックを搭載した最新モデルとして正式にデビューしたピナレロ・プリンス。
フレーム素材はデダチャイ社のスカンジウム添加アルミチューブ、SC61.10A。フォークとバックのカーボンセクションはカーボン素材のオーソリティ、タイム社が製作を担当したと噂され、当時はまさに時代の最先端を行く、ロードバイクファン垂涎の一台だった。
華々しいデビューを飾ったプリンスは、99年よりドイチェテレコム、ファッサボルトロという2つの強豪チームに供給されるプロユースバイクとなり、動力性と快適性を両立させた高性能を武器に数々の勝利を獲得、その華やかでアーティスティックなペイントも相まって人気に火がつく。
他のメーカーに最も大きな影響を与えた一台でもあり、カーボンバックは瞬く間にロードバイクシーン、そしてロードレースシーンに浸透した。未熟なブランドはカーボンバックの採用がフレームバランスに悪影響を与えることもあったそうだが、プリンスは最初から完璧な性能を見せ付けた。
写真のバイクはおそらく2001年モデル。現在のバイクには見られなくなった、手の込んだカラーリングは今見ても秀逸だ。溶接ビードはまるでチタンフレームのような美しさ。フォークとバックのカーボンセクションがオレンジに色づけられているのが珍しい。
コンポーネントは7700系デュラエース、ホイールはキシリウムSLと、フレームと同じ時代のパーツで組まれている。カンパニョーロ・コーラスのチタンピラーやチネリ・グランモチタンステムなど美しい絶版パーツが組み込まれ、綺麗な状態を維持しているが、この時代のピナレロバイクによく見られるロゴの剥離がオーナーを悩ませているという。
その後、プリンスはデダチャイU2をベースにした軽量モデル「プリンスLS(リミテッドシリーズ)」、自慢のオンダフォークを装備した「プリンスSL(スーパーレジェッラ)」へと進化し、2006年にピナレロのカタログから名を消した。
現在は2代目としてプリンス・カーボンがピナレロの旗艦として力強く君臨しているが、そこに初代プリンスの面影を見ることはできない。
| フレーム | デダチャイ・SC61.10A+カーボンバック |
|---|---|
| フォーク | VOLAカーボンフォーク |
| コンポーネント | シマノ・デュラエース(7700系) |
| ホイール | マヴィック・キシリウムSL |
| 価格 | \333,000(フレームセット・当時) |
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